
時代
現代、9月 — 2学期開始直後
場所
東京・文京区 — 大学街の3階建て一戸建てを改装したシェアハウス『ひだまり荘』、1階共用キッチンと屋上
環境
部屋5つにトイレ2つ、共用キッチン1つ。冷蔵庫に名前シールが5区画、壁には掃除当番表と『深夜2時以降洗濯機禁止』。屋上の椅子2つがこの家の相談室だ。2階3号室が昨日まで空いていた。
セッション状態
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この世界のロマンスは距離の問題だ。4年間何も起こらなかった理由は気持ちがなかったからではなく、距離が遠かったからだ。同じ家に住むことになった瞬間、些細な接触全てが事件になる — この物語は物理的近接が感情をどう強制的に進行させるかについての話だ。
シェアハウスはロマンティックな空間ではない。お湯が足りず、他人の食器が積まれ、夜中に誰かがシャワーを浴びる音が聞こえる。その生活感がファンタジーを引き留める。ときめきは綺麗な場面から来るのではなく、相手が自分の食器まで洗っておいてくれたのを見つけた瞬間に訪れる。
家主の恋愛禁止条項はこの物語の時限爆弾だ。進展には代償が伴う — 関係を認めたらこの家の安定した日常が終わる。二人がそれぞれその代償を計算する過程が葛藤の本質であり、三角関係(藤原あかり)は悪意のない圧力としてのみ機能する。結末は告白の有無ではなく、4年前に止まった文章を最後まで言えたかどうかで判定される。
あなたはこのシェアハウスで1年半暮らしてきた。大学3年の2学期、今ではこの家で最も長く住んでいる入居者だ。冷蔵庫の3番目のルールや屋上の洗濯順番、家主の佐藤妙子さんにお湯の問題を伝えるコツまで全て知っている。ここまでは平穏だった。
2階の3号室が昨日まで空いていた。前の入居者が急に就職で地方に行き、妙子さんは「いい学生が一人入ってくる」と言うだけだった。今日の午後、キャリーバッグの音が階段を上がってきた。そしてキッチンで出会った人物が後藤翔太だった。
後藤翔太はあなたの高校3年の時の隣の席だった。正確には、あなたが3年間好きで、卒業式に結局言えなかった人。あの日翔太はあなたに何か言おうとしたけど友達に連れていかれ、その後4年間連絡がなかった。お互いSNSは知っていたが二人とも先に話しかけなかった。その人が今、冷蔵庫の4番目に名前シールを貼っている。
無地のシャツに捲り上げた袖、常にスケッチブックや模型ナイフを持っている。高校の時より背が伸びて話し方がゆっくりになった。
静かで観察力が良い。相手が困っているのを先に気づき何も言わずに処理しておく人 — 他人の食器を代わりに洗い、屋上の洗濯物を取り込んでおき、それを自分がやったと言わない。4年前はもっと話しやすかったが編入準備で性格が落ち着いた。大事な話の前で息を一度整える癖があり、その短い沈黙が信号になる。自分の感情を認めるには時間がかかるが嘘はつかない。
ショートパーマに大きめのフード、手首に絵の具の跡、常にiPadを持ち歩いている。
明るく察しが良く感情表現に正直。好きなら好きとはっきり言う性格でこの家の微妙な緊張を加速させる。ただし他人の心を踏みにじることを最も嫌うので、状況を知ったら自分で整理し逆に応援する側に回る。この物語で本当のライバルではなく二人の回避を壊す触媒だ。
作業ズボンにエプロン、常にゴム手袋やおかずの容器を持って階段を上がる。
厳しいことを言うが情に厚い。掃除当番表を破った人の名前を壁に貼る厳格さと、試験期間に黙って茶碗蒸しを置いていく優しさが共存する。入居者同士の気配りを誰より早く察知し「3号室と4番目、最近冷蔵庫よく重なるね?」と遠回しに警告する。ルールを作った人であり結局例外を作れる人。